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ベルリンでのグローバルローンチイベントのハイライト

作成者: Admin|Jul 23, 2020 9:27:00 AM

ベルリンでのグローバルローンチイベントのハイライト

7月9日(木)、ベルリンでのライブバーチャルイベントで、2030年までに2~4剤の新規抗菌薬を患者さんに届けることを目指す画期的なパートナーシップであるAMRアクションファンドが設立されました。

薬剤耐性(AMR)とも呼ばれる抗菌薬耐性感染症の急増に対処するため、新しい抗菌薬が喫緊に必要とされています。 20社以上の先進的な研究開発型製薬企業がこの問題に取り組むために立ち上がり、最も耐性の強い細菌や生命を脅かす感染症に対する革新的な新規抗菌薬の研究開発を支援すべく、10億米ドルの資金を拠出しました。

AMRアクションファンドのコンセプトは、世界保健機関(WHO)、欧州投資銀行(EIB)、及びウェルカム・トラストとともに考案されました。AMRアクションファンドは、パイプラインの革新的な候補物質が最も困難な後期開発段階を乗り越えられるよう橋渡しし、最終的には持続可能な抗菌薬パイプラインを実現して、私たちの未来を守るために必要な政策改革を行うための時間を政府に提供します。

以下のリンクをクリックすると、フルバージョンのイベント動画記者会見のハイライト動画を視聴できます。

国際製薬団体連合会(IFPMA)が主導し、国や地域の業界団体と共同で行われた、AMRイニシアチブのグローバルローンチイベントは、7月9日にワシントンD.C.とベルリンで同時開催され、さらに7月10日に東京でもイベントが行われました。本ファンドの詳細については、AMRActionFund.comをご覧ください。

ベルリンのイベントでは、AMRに対するイノベーションの課題の国際的側面と欧州的側面に焦点が当てられました。イベントプログラムの詳細については、こちらをご覧ください。

ハイライト

ベルリンで開催されたバーチャルローンチイベントでは、主要製薬企業、バイオテクノロジー企業、及び政策形成に関わるステークホルダーという、そうそうたるメンバー(7人の業界CEOや業界団体代表者に加え、EU、ドイツ、フランス、及びデンマークの5人の政策立案者、そして本ファンドの創設に協力した組織[WHO、EIB、ウェルカム・トラスト]のリーダーが参加)によるパネルディスカッションと意見表明が行われ、AMRへの取り組みの重要性を強調しました。

AMRは重大な課題であり、新規抗菌薬に対するファンドを通じた業界初の取り組みは歓迎すべきものです。

AMRは、極めて重大な世界的危機であり、死者数や経済的コストの点でCOVID-19を上回る可能性があります。また、イベントがバーチャルで開催されたことで、COVID-19との関連性は誰の目にも明らかなものとなり、ほとんどすべてのパネリストが、COVID-19の危機を通じて得た経験はAMRに対してより適切な備えをする上で役立つと述べました。

英国のAMR特使Dame Sally Davies氏は、AMRが健康と経済に及ぼす影響について、次のように説明しました。「投与される治療薬に対する耐性により、全世界で年間70万人以上が死亡していることがわかっており、インドでは毎年約6万人の新生児が敗血症で亡くなっています。それによる人々の幸福や医療システムに対する影響ははかり知れません・・・世界銀行はこれまでに重要な報告をまとめており、有効な抗菌薬、有効な抗菌薬がなければ、2050年までに2,800万人以上が極度の貧困に陥るという、極めて憂慮すべき報告がなされています」。 これに加えて、フランスのAgnès Pannier-Runnacher産業大臣は、「これは健康の問題だけではなく、経済のレジリエンスの問題でもあります」と述べました。

2ヵ国の保健大臣、ドイツのJens Spahn保健大臣とデンマークのMagnus Heunicke保健大臣兼高齢者担当大臣が、各国のCOVID-19への対応を監督する任務から一時離れて式典に参加し、AMRに対処することの重要性に対する認識を示しました。Spahn保健大臣は、COVID-19に対して、「国、企業、そして科学が力を結集すれば、変化をもたらすことができるでしょう・・・これは、この新たなファンドとAMRに関するイニシアチブを後押しするものです」と述べました。

耐性の性質上、常に新しい抗菌薬が必要になります。しかし、薬剤耐性菌の出現は、新たな抗菌薬が市場に出るよりも早いペースで進んでいます。このことは、各国がWHOに報告しているAMRのモニタリングデータから見て取ることができます。WHOTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長は、「各国から提供されるデータは、感染症を治療する必須医薬品に対する耐性が驚くべき速度で世界中に広がり続けており、現在の抗菌薬パイプラインでは不十分であることを示しています」と述べ、さらに「民間投資が縮小し、公共投資ではそれを十分に補うことができていない中、AMRアクションファンドは、世界中のバイオテクノロジー企業に対する投資を通じて現状を打破し、抗菌薬の研究開発を強化・加速させることにより、こうした流れを逆転させるカギとなるでしょう」と語りました。

欧州投資銀行のWerner Hoyer総裁は、次のように述べています。「COVID-19後の世界で、AMRは次なる課題となり、増大する公衆衛生上の脅威となります。残念なことに、これまでの取り組みは、多大な投資のギャップを埋めて優先病原体に対する新たな治療選択肢をもたらすには、いずれも不十分でした。将来予測される耐性の増大に向けて、より適切に対処できるようにするためには、今、行動を起こすことが何よりも重要です」。 さらに、Hoyer総裁は、「成功を収めるためには、パートナーシップによって生み出される価値が不可欠です・・・私たちは、このファンドの設立メンバーの一員として、皆さまと力を合わせて取り組んでいけることを誇りに思っています」と述べました。

ウェルカム・トラストのJeremy Farrar代表は、AMRアクションファンドについて、抗菌薬の研究開発に対する単独のコミットメントとして過去4年間で最大級のものであると称賛し、現在、後期開発段階を支援する投資家を見つけるのに苦戦しているイノベーターに対して喫緊に必要とされるライフラインを提供するものとなるだろうと述べた上で、「有望な製品が初期の創薬段階から世界のあらゆる地域で必要とする患者さんに届けられるまでの道のりを、もっと信頼の置けるものにする必要があります」と訴えました。

単なる資金提供にとどまらない – 出資製薬企業はバイオテクノロジー企業とノウハウも共有

参加者らは、AMRへの対応において業界が果たす重要な役割に対する認識を示し、研究と患者さんの間にあるギャップを橋渡しするために極めて必要とされている資金とノウハウを新興バイオテクノロジー企業や中小企業が利用できるようにすること、努力次第で世界が次の世界的な健康危機に備えられるようにすること、そして抗菌薬パイプラインを長期的に改善する方法について議論を開始すること、という本ファンドの3つの重要なベネフィットを強調しました。

本ファンドが10億米ドルの資金に加えて提供する現物支援について、ベーリンガーインゲルハイムのHubertus von Baumbach取締役会会長は、次のように述べました。「私たちは、製品がどのように研究され、臨床開発され、登録され、市場に投入されているかをよく理解しています。そうしたノウハウは、私たちがこのファンドに貢献できると考えている資産の1つです・・・お金は一般的な支援であり、どこからでも提供することができます。私たちはこのファンドの投資家として、業界のリスクプロファイルを理解し、若い企業が何を必要としているかを把握しています。私たちは、そうした企業が研究に専念できるよう、長年築いてきた経験と必要な支援を提供したいと考えています」。

Da VolterraCEOBEAM連合会BEAM Allianceの会長であるFlorence Séjournéは、AMRアクションファンドの設立を歓迎し、次のように述べています。「このファンドはBEAM連合会のメンバーにとって素晴らしい機会となり、市場投入までの道のりを信じさせてくれるものです。また、本ファンドは、臨床開発、規制、及びマーケットポジショニングに関する助言の形でも支援を提供します。この極めて複雑な医薬品開発の世界では、特に成功の確率を最大限に高めるための革新的なアプローチなどについて十分な助言を得ることができないことから、こうした支援はバイオテクノロジー企業にとって大変ためになります。バイオテクノロジー企業の中長期出口戦略は、極めて重要なカギとなります。AMRイノベーションの実現可能な事業モデルを復活させるためには、業界との共同プラットフォームによる支援が非常に重要です」。

しかし、参加者らは、AMRアクションファンドを必要かつ貴重な取り組みとして評価する一方で、政策変更やほかのステークホルダーによる取り組みが必要であることも指摘しました。

政策改革と複数のステークホルダーによる取り組みが急務

IFPMAThomas Cueni事務局長は、「2~4剤の新規抗菌薬では、この問題の長期的解決にはなりません。細菌は今後も引き続き耐性を獲得していきます。したがって、長期的な市場改革が必要であり、政府の関与が必要になります」と述べ、「さまざまなイニシアチブにより、臨床研究資金が必要な新しい候補物質を生み出している小規模なバイオテクノロジー企業は、出資者が出てきてくれることを切望しており、本ファンドはこの部分において大きな役割を果たすことになります。しかし、最終的には、抗菌薬の研究に対する関心が再び高まるような長期的な対策が必要であることから、政府からの支援も必要になります」と訴えました。

製薬業界は資金面でのギャップを橋渡しすべく取り組んでいきますが、政策立案者も行動を起こす必要があります。複数の政策立案者が、抗菌薬の研究開発に対する投資を再度呼び込み、イノベーションが患者さんに届くようにするためには、どのような規制改革や新たなインセンティブが必要かについて語りました。

AMRの問題に単独で効果的に取り組むことができるステークホルダーはおらず、複数のステークホルダーによる取り組みこそが進むべき道であることが強調されました。 世界保健機関のTedros Adhanom Ghebreyesus事務局長は、次のように述べました。「どの部門もこの問題に単独で取り組むことはできません。ですから、製薬業界、開発銀行、慈善団体による今回の共同取り組みは歓迎すべきものです。これは、公共部門からガイダンスを得ながら、民間部門の投資を世界的な公共問題に対処するために使用するという、官民パートナーシップの新たなモデルです」。 声明の中で世界保健機関は、AMRアクションファンドの設立が抗菌薬開発の活性化に向けた重要な一歩であり、また、新薬に対する現行の調達・償還システムに極めて必要とされている改革に取り組む機会を生み出すものであるとしました。

フランスのAgnès Pannier-Runacher経済財務大臣は、バイオテクノロジー企業の市場アクセスを支援してAMRと闘う取り組みを推進する上で、AMRアクションファンドは重要であるとし、既存の事業モデルはうまく機能しておらず、十分ではないと述べて、喫緊の改革の必要性を訴えました。「私たちは、このコンソーシアムを手助けし、新たなモデルを見出すことに取り組んでいく所存です・・・フランスの経済学者でノーベル賞受賞者のJean Tirole氏に、新たな経済モデルの構築に取り組んでもらえるよう依頼しています」。

ドイツが欧州理事会の議長国を務めていることに関連し、Spahn大臣は「ドイツが欧州理事会の議長国を務める間は、抗菌薬耐性に必要な注意が払われることになるでしょう」と述べました。 Spahn大臣は、適切なインセンティブの設定方法についてアイディアを求めるとともに、英国のアプローチについても言及しました。「これについては、どの程度効果があるか今後も注視していきますが、最終的に必要なのは具体的なツール、具体的なアプローチであり、このファンドはその1つです。その他に公的機関や国が主導できるアプローチがあれば、喜んで取り組みたいと思います」。

こうしたディスカッションの間に、1,200人以上のオンライン視聴者がAMRアクションファンドに対する支持を表明し、何らかの形で関わっていきたいとしました。 経済協力開発機構(OECD)の雇用・労働・社会問題委員会のMark Pearson副委員長は、次のように述べました。「この素晴らしいイニシアチブに対して祝意を表したいと思います。経済に関する私たちの専門知識を、プル型インセンティブの必要性に関する必要な議論に活かしていければ幸いです」。 F2Gの最高医学責任者兼取締役であるJohn Rexは、次のように述べました。「本日のAMRアクションファンドの発表は素晴らしいニュースでした・・・正直なところ、嬉し涙を浮かべてしまいました。業界が拠出するこの10億米ドルにより、プル型インセンティブを創出して新たな「消火器の役割を果たす医薬品(#FireExtinguishersOfMedicine)」の持続可能なパイプラインを確保するための時間を稼ぐことができるでしょう!」

イベントの締めくくりとして、パネリストらはAMRアクションファンドが長期的に大きな変革をもたらす可能性に歓迎の意を表しました。本ファンドは、短期的には抗菌薬の研究開発における資金面でのギャップを橋渡しする一方、すでに本ファンドがきっかけとなって、業界、慈善団体、及び世界の公衆衛生部門の間で議論と連携の輪が広がっていることに、大筋での合意が得られました。

「これ自体は解決策ではなく、つなぎの対策です。AMRアクションファンドは、2~4剤の新規抗菌薬を製品化するための橋渡しをすることを目標としており、何年も前にこの分野から撤退したことに対する批判への対応として、また、現在適切な経済モデルがないことから、業界として立ち上がり、取り組んでいくことを示すものです。私たちは、この経済モデルを再構築する必要があると強く確信していますが、業界としての取り組みも進んで行っていきたいと考えています。各企業は、このつなぎの対策に投資し、橋渡しをしたいと考えています。

私たちは、2050年以降、成果を上げるにはどうすればよいかという議論を今から始める必要があります」。IFPMAThomas Cueni事務局長は、ディスカッションの締めくくりでこのように述べました。

詳細については、Abigail Jones(a.jones@ifpma.org)又はSilas Holland(silas.holland@amractionfund.com)までお問い合わせください。