出典: MedWatch

IFPMA事務局長が抗菌薬の今後を懸念:パイプラインの現状は「厳しい」

国際的な業界団体であるIFPMAのThomas Cueni事務局長は、現在臨床開発中の抗菌薬パイプラインについて「厳しい」という言葉で表現しています。Cueni事務局長は、新たに設立された抗菌薬基金であるAMRアクションファンドを通じて、この状況が変わることを願っています。

一筋の希望

AMRアクションファンドは、WHO、ウェルカム・トラスト、ノボノルディスク財団、そしてノボノルディスク、レオ ファーマ、ルンドベックなど23社の製薬企業の支援を受けてこの7月に設立された抗菌薬基金であり、IFPMAがその設立を主導した理由の1つは革新的な抗菌薬の不足です。

AMRアクションファンドは、新規抗菌薬の開発に投資することで、耐性菌との闘いに新たな息吹を吹き込もうとする基金の1つです。ほかの基金の例には、米国政府、ドイツ政府、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、及びウェルカム・トラストからの支援で2016年に設立されたCARB-Xや、ノボホールディングスによって2018年に設立されたREPAIRインパクトファンド(REPAIR Impact Fund)などがあります。

現在の臨床パイプラインは期待以下であるものの、これらの基金は現在新たな抗菌薬の前臨床開発に取り組んでいる若い企業に一筋の希望の光を与えているとCueni氏は言います。

「CARB-Xのようなイニシアチブのおかげで、前臨床開発の環境は以前より活気あるものとなっています。こうした候補物質の開発には資金が必要です。私たちが[CARB-XやREPAIRインパクトファンドのような]こうしたイニシアチブと競合せず、互いに補い合うのはそのためです」とCueni氏は述べています。

今後の抗菌薬の地位の確保

AMRアクションファンド、CARB-X、REPAIRインパクトファンドのような基金によって、新規抗菌薬の市場が財政危機に苦しんでいる現状においても、耐性菌に対抗する抗菌薬が継続的に開発されるようにする取り組みが行われています。

耐性菌に対抗する抗菌薬の開発は、要するに採算が悪いビジネスです。この種の抗菌薬は、新たな耐性が発現しないよう、できるだけ処方が控えられ、それによって売上が少なくなるからです。そこで業界関係者らは、企業に支払われる金額が処方数に直接比例しないサブスクリプション制に基づく新たな支払いモデルの導入を推奨しています。

AMRアクションファンドが設立された際、ノボホールディングスのKasim Kutay CEOは、抗菌薬市場の危機に対して解決策を取ることが同ファンドの取り組みにとって極めて重要であると述べています。

「このファンドを通じて最高・最新の研究開発に投資する必要がありますが、その一方で、長期的な解決策として実現可能な経済モデルが必要です。経済モデルが機能していなければ、薬剤を開発して市場に出す意味はありません」とKutay氏は述べています。

さらにCueni氏は、同ファンド自体が新たな価格モデルの開発を行うことはないが、IFPMAではそうしたアジェンダを別途推進していくと述べています。

「同ファンドでは、公衆衛生研究や人生を一変させるような抗菌薬への投資を行っていきます。その一方で、インセンティブや新たな市場モデルに関する議論については事業者団体の方で取り組んでいきます」とCueni氏は述べています。

「このファンドの設立が、今までの流れを変えるイニシアチブとなることを願っています」とCueni氏は述べています。

Thomas Cueni

IFPMA事務局長