出典: Center for Infectious Disease Research and Policy (CIDRAP)

適正使用/耐性スキャン

バクテリオファージ療法の有望性/抗菌薬に対する新たな償還モデル。

バクテリオファージ療法の有望性を示す論文

オープンフォーラム・インフェクシャス・ディジージズOpen Forum Infectious Diseases誌に掲載された新しい論文は、バクテリオファージ療法による治療を行った抗菌薬耐性感染症例から得られた教訓をいくつか紹介しています。

今回の論文を執筆するにあたり、California大学San Diego校の革新的ファージ応用・治療学センター(Center for Innovative Phage Applications and Therapeutics:IPATH)の研究者らは、約2年分のバクテリオファージ療法の診療依頼をレビューし、同センターで静脈内(IV)バクテリオファージ療法を受けた最初の10症例の転帰について調査しました。IPATHは、多剤耐性感染症に対する殺菌ウイルスの臨床使用を拡大するため、2018年に立ち上げられました。

患者及び医師からの785件の依頼のうち、82%が細菌感染症の治療を目的としたものであり、その主な原因は緑膿菌、黄色ブドウ球菌、及びマイコバクテリウム・アブセサスでした。推奨された119例中17例でバクテリオファージ療法が施行され、依頼から施行までの時間の中央値は170日でした。

最初の10例をレビューした結果、7例で転機が良好であったことから、バクテリオファージの静脈内投与と噴霧療法は安全であり、外来患者に安全に施行できると考えられ、感染症を抑制するのに利用できることが示されました。また、同レビューでは、バクテリオファージ療法に対して細菌の耐性が発現する可能性はあるが、新たなファージの使用により克服できること、ファージと抗菌薬の併用によりin vitroで抗菌薬耐性があっても良好な転機を得られること、そしてin vitroでファージ感受性が認められても治療が不成功となる可能性があることも示されました。

「結論として、さまざまな適応症に対するBT[バクテリオファージ療法]に関する私たちの経験は、複数の臨床適応症に対するBTの有望性を強調するものである」と同論文の著者らは記しています。「成功の予測因子を特定し、より幅広い使用につながる臨床試験をデザインするためには、相当な研究が必要である」。

827Open Forum Infect Dis抄録

欧州の医薬品メーカーが抗菌薬に対する新たな償還モデルの必要性を訴え

先週末、BEAM(Biotech companies in Europe combating Antimicrobial Resistance:薬剤耐性と闘う欧州のバイオテクノロジー企業)連合会は、欧州連合(EU)と各加盟国に対し、抗菌薬に対する新たな償還モデルを採用するよう要請しました。

抗菌薬に取り組む欧州の中小企業70社が加盟する同連合会は、ウェブサイト上の文書の中で、欧州委員会に対し、新規抗菌薬の採算が取れるようにする新たなプル型インセンティブの枠組みを作成すること、そして必要なインセンティブの規模に関するガイダンスを加盟国に提供することを求めました。

また、同団体は加盟国に対し、新規抗菌薬の開発を促す新たなEUの法的枠組みを支持・採用すること、そして英国やスウェーデンで採用されているものと同様な新しい償還モデルを作成することを奨励しました。

「新規抗菌薬は(適切に)使用が控えられているため、新薬開発者は資金面で苦戦したり、倒産したりしています」と同連合会は述べています。「BEAM連合会と本文書の連署者は、EUとその加盟国に対し、抗菌薬の開発と商品化への投資をめぐる破綻した経済システムに早急に対処し、解決することを強く求めます」。

また、同連合会は先週ウェブサイトに掲載された別の文書で、製薬企業が今夏はじめに発表した抗菌薬の後期開発段階を支援するための約10億米ドルの取り組みであるAMRアクションファンドの立ち上げに対して支持を表明しました。しかし、同ファンドと合わせて、「資金提供の結果開発された抗菌薬が科学的・臨床的観点からだけでなく市場の観点からも真に実現可能なものとなるよう、この分野におけるイノベーションを支援する商業的エコシステムが構築される必要があります」と同団体は指摘しています。

828日付の新たな償還モデルに関するBEAM連合会の文書

827日付のAMRアクションファンドに関するBEAM連合会のリフレクションペーパー